きのうのおはなし

『里菜』「なに」『ぶさいく』「(…)」『傷付いた?』「もう慣れた」『あのね、俺ね人を傷付けるの大好きなんだ』「ふーん‥」『ははは』「   」『なんだよ』「きみはそれでしあわせなの?」『   うるさい』「しなないでね」
『 里菜』「なに」『ころしてくれよ』
彼は度々、「ころしてほしい」と口にする。「しにたい」よりも狡い響きだと思う。たぶん、きっと、ずっと、わたしのほうが「ころしてほしい」。
彼の右手に支えられたピースライトからは煙がもくもく。灰が落ちそう。落ちそう。落ちそう。 落ちた。 ああまた匂いが残っちゃう。
わたしの右手人差し指にはまだ彼の歯形が残っていて、あたしはここから動けずじまい。